事例1<会社の人事・労務>

 

 A有限会社は、歴史建築物の職人会社です。X社長はまだ40初の若い2代目社長で、先代の優秀な弟子として後継指名され株式の譲渡を受けて、経営に当たっています。Y社員は49歳ですが、4年前の大工事の受注時に“猫の手も借りたい”状態で、未経験で入社しました。ところが二番目の年長でありながら、なかなか現場施工の腕が上がらず、自分より年下の職長(管理職)の指示で働くことが嫌でならず、しばしば問題を起こしています。有名な中高一貫校から一流私大を卒業しており、中小企業のヒラに甘んずることに、プライドが許さないのです。今回は高所作業時の軽い暴行事件を起こし、臨時契約の社労士のアドバイスで自宅待機の懲戒処分(無給)を受ける羽目になりました。先代が就業規則を作成していたため(A社は社員9人なので法定義務はない)、根拠ある法的対応ができ、危険作業への“シメシ”が出来たのです。これを契機にA社は詳細な現場作業手順書を作り、年齢に関わらない技術本位の昇給・昇格の基準とすることにしました。ジョブ型の賃金体系へと踏み出したといえます。先代の残した施工台帳・竣工写真も展示し、若者を含む社員のモチベーション向上、そしてキャリアップ・プランの作成を次の経営目標に定めています。

事例2<遺言・相続>

 

 B社長は70歳、都内の海産物問屋の3代目ですが流石に体力も落ちてきて、ぼちぼち引退を考えるようになりました。商店街の同年代の仲間も、跡継ぎに任せたり、店を畳む者もおり、様々です。娘二人は既に他家に嫁いでおり、長女の夫は大会社のサラリーマンで、今は家族四人で中部地方に住んでいます。いずれ東京に転勤はあるかと思いますが、辞めて自分の店を継げとは、言いにくい状態です。次女の夫もサラリーマンですが、こちらは大手コーヒー・ショップ・チェーンの雇われ店長で、いずれ独立したいと希望しているように思われ、もしかすると後を継いでくれるかも知れません。奥様も健康で、二人でたまに孫たちに会うのを楽しみにしていますが、不慮のことも念頭に置き、先だって区の行政書士無料相談で遺言・相続の話を夫婦で聞きに行きました。

 ここで得られたアドバイスは、まずB社長自身の望む本音のストーリーを描いてみて、これを二人の娘さんに伝え同意してくれるようであれば、遺言という形で遺してはどうか?という内容でした。娘の夫とその一族はやはり他人だから、誰が何を言い出すか分からない。まずは身内で意見をしっかりまとめ、皆に相談するのはそれからが良いのではないか?

 B社長は会社の顧問社労士(兼)行政書士に家庭の事情を話し、相談。遺言は息子・娘の配偶者、その一族から、本人の死後に不満・指摘が出ることもあり、法的な保護を用意すべきだ。以前は地元の公証役場に赴き証人二名を得て行う公正証書遺言が最も確実だったが、今は、法務局が自筆証書遺言の預かりサービスをしてくれる。これをしておけば費用もかからず、開封時の家裁での検認手続きも不要になる。最終的には公正証書遺言をするとしても、先ずは不安解消のため、法定の様式での自筆証書遺言を書いてみてはどうか?相続人の戸籍謄本を得ての相続人関係図、財産目録の作成は、専門化士業としてB社長をお手伝い致しますよ。

 B社長は、信頼できる顧問のアドバイスに従い、まずは自筆証書遺言を書いてみることにしました。

事例3<事業承継>

 

 C社長は、都内の機械部品商社の3代目です。社員25人の中小企業ですが、先代の営業力のお陰で関東圏に3支店を置き、自動車関連を主に、仕入先・販売先の安定した手堅い経営を行っています。ただ引退した先代も90歳を超え、片や後継者に見込む長男はまだ高校生であり、同族で持つ株式の維持を含め、ここで対策を打つ必要に迫られていると感じていました。

 信頼できる顧問社労士(兼)行政書士の定期訪問の際、思い切ってこのことを相談しました。顧問は流石に知識・経験が豊富で、とても実践的なアドバイスをしてくれました。

 先代がもし認知症、あるいは重病になると会社役員・株主としての意思能力を失い、法定後見人の選任を家裁にしてもらうことになり、先代本人は勿論、C社長の意向が反映できなくなる。外部の弁護士等が選任される可能性が高く、先ずこれを対策しておきたい。また遺言を書いてもらうことは必要だが、法定相続人である配偶者・子までの一次相続しか指定ができないから、二次相続となる配偶者から子へ、あるいはC社長の長男(先代の孫)までの株主・経営権の立場は、法的には一切指定ができない。これが遺言の法的な限界である。

 これらの問題点を解消する方法として、民事家族信託という新しい法制度が使える。先代の達者な内に、信託財産の保有者である委託者(兼)一次受益者を先代と奥様、受託者(信託財産の管理・運用者)をC社長、二次受益者を奥様とC社長、三次受益者をご長男、とする信託契約が可能。信託登記をした上で、現金は金融機関に信託口口座という形で、別扱いの管理ができる。

 会社の一族での永続的な維持・発展が先代の望みであり、幸いにC社長という後継者がいて会社を守ってくれており、民事家族信託を活用することで、従業員・取引先を含む安定した将来が見込めるものと、考えられます。

 

事例4<補助金・助成金>

 

 D産婦人科は不妊治療が専門のクリニックです。この分野の医療機関は少なく、県内西半分では有数の存在であり、隣県からも患者さんが押しかけています。成長著しく、また手術等で多忙を極めるため、院長は補助金・助成金には関心を抱いていなかったのですが、若い事務長の発案で、この分野に強い社労士・行政書士事務所と顧問契約を結ぶことにしました。

 折しもコロナ禍が全国を覆い、Dクリニックも患者さんへの対応に追われることとなりました。従来の院内清掃業務も、消毒作業を強化した対応にしなくてはなりません。ここで新しい顧問事務所が、コロナ対策費用への補助金・助成金を探してくれました。厚労省の補助金だけでなく県の助成金も、申請してくれたのです。総額300万円が獲得できました。

 医療機関向けの補助金・助成金は他にも色々あり、電子カルテ・システムへの交換投資、防火設備投資、そして院長の妻の経営する社団の事業(院内でのベーカリーの新規事業)への補助金も可能性が出て来ました。

 補助金・助成金を有効活用することで経営に余裕ができ、県内の産婦人科の空白地帯をカバーするため、分院を発足させることが決まりました。通院に苦労する妊産婦の方々のお役に立てると、若い医師・看護師も、とても張り切っております。